Classiques japonais avec furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lisez 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 256 caractères · 77 écrans
宮内省の御用地という。草青く喬木描くが如し。我が偏奇館この空地を去る事遠からざれば散策の途次必ず過ぎて夏の夕には緑蔭に涼風を迎えて時に詩を読み、冬の夜には月中落葉を踏んで将に臨皐に帰らんとするの坡公を思う事あり。
空地は崖に臨み赤坂の人家を隔てて山王氷川両社の森と相対し樹間遥に四谷見附の老松を望み又遠く雲表に富嶽を仰ぐべし。黄葉の時節夕陽の眺望殊によし。晩霞散じて暮烟紫に天地を罩むるや人家の燈影亦目を慰むるに足る。されば氷川の森の背後にかの殺風景なる三聯隊の兵舎の聳ゆるなくんば東京市内の空地の中風光絶佳の処となすも決して過賞にあらざるべし。余市中の散歩を好む。曽て日和下駄なる一書を著すや市内に散在する空地を探りてその風趣を説きしがここに此の仙境あるを知らず従って言う処なかりき。今甚これを憾みとす。
我が師柳浪先生移居の癖あり。曽て言えらく小説家は折ある毎に家を遷すべし。家を遷せば近隣目新しく近隣目新しければ従って観察の興を催し述作の資料を得る事尠からずと。宜なる哉其の傑作「浅瀬の波」は深川砂村の辺に住われし事あるが故に出で来れるもの。「狂言娘」は根津に「黒蜥蜴」