Classiques japonais avec furigana
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はなのひょうげん
鼻の表現
夢野 久作
Lisez 鼻の表現 (はなのひょうげん) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 303 caractères · 141 écrans
如何に経歴を偽っても、又は柔和な人相をしていても、
「此奴油断のならぬ奴」
と思わせるのは、その胡乱な経歴から来た性格が鼻に現われているからであります。
戦場場数の豪の者、千軍万馬を往来した驍将の鼻には、どことなく荒涼凄惨たる戦場の殺気を彷彿せしむべき或るものがあります。
泥水商売に身も心も浸して来た鼻には、血も涙も褪せ果てた見すぼらしい本心の姿が見えるというのは、さもあるべき事でありましょう。
この故に大聖孔子は、一野翁老子の前に頭が上らなかったのではありますまいか。
かかるが故に、歴山大王は一乞食学者ダイオゼニアスを奈何ともする事が出来なかったのではないでしょうか。
賤が伏せ屋の見すぼらしい母子が只の人でないと眼をつけられ、綾羅錦繍の裡に侍ずかるる貴婦人がお里を怪しまるるそもそもの理由も、亦ここにあるのではありますまいか。
骨相学者や運命判断の原理は別としましても、その人の経歴と性格と運命とが、鼻の表現を中心として循環転変して行きつつある事は疑う余地ありませぬ。
この道理は歴史の上にも現われて、成る程と思わせられる事が甚だ多いのであります。
歴史上に活躍する人物の性格と、これに対する群集心理との結合は何に依って成り立っているか。