Classici giapponesi con furigana
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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
Leggi うすゆき抄 (うすゆきしょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.454 caratteri · 59 schermate
ものの半月あまり、道益は鉄砲を据えて根気よく居坐っていたが、待ちに待った甲斐があって、夜更け近く、いつか見た貧郷士が、小狩衣に悪魔の面甲をつけた装で佶屈と森の中から出てきた。最初の一瞥では、この前とすこし身丈がちがうようであった。遠目にも猛々しい体躯で、不態なほど肩幅が張りだし、猪首の坐りぐあいも妙である。他人の邸の庭で女と忍逢うにしては、歩きっ振りがいかにも馬鹿げている。貧郷士が忍んでくるときには、上の燈台に、というのは娘の行子の部屋のことだが、花々しいほど南蛮蝋燭の灯がともり、十里先の海の上からでも見えるくらいに輝きだすのだが、なぜか今夜にかぎってそれがないのもおかしい。そういうきれぎれの疑問が道益の念頭を擦過したが、娘の幸福を脅かす毒蟲を取って捨てたい、射ち殺してやりたい、踏みにじってやりたい一途な悪念にとりつかれていた折だったので、照尺を睨むなり、
「かったいめ、よくも娘をたばかし居ッた」と曳鉄をひいた。
むやみな銃声がおこり、筒口から雲のように硝煙が噴きだして庭面いちめんにたちこめた。道益は鉄砲を杖にして縁端に立ち、池の汀のほうを透してみると、見ン事、射ち当てたとみえ、貧郷士は汀石の露草の間にあおのけに倒れている。