Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
どこの殿様がこさえたたとえか知らねえが、長い物にゃ巻かれろなんて、あんまり向うの都合が良過ぎるぜ。橘屋の若旦那は、八百蔵に生き写しだなんて、つまらねえお世辞をいわれるもんだから、当人もすっかりいい気ンなってるんだろうが、八百蔵はおろか、八百屋の丁稚にだって、あんな面があるもんか。飛んだ料簡違いのこんこんちきだ」
誰にいうともない独言ながら、吉原への供まで見事にはねられた、版下彫の松五郎は、止度なく腹の底が沸えくり返っているのであろう。やがて二三丁も先へ行ってしまった徳太郎の背後から、浴びせるように罵っていた。
「おいおい松つぁん」
「えッ」
「はッはッは。何をぶつぶついってるんだ。三日月様が笑ってるぜ」
「お前さんは。――」
「おれだよ。春重だよ」
うしろから忍ぶようにして付いて来た男は、そういいながら徐ろに頬冠りをとったが、それは春信の弟子の内でも、変り者で通っている春重だった。
「なァんだ、春重さんかい。今時分、一人でどこへ行きなすった」
「一人でどこへは、そっちより、こっちで訊きたいくらいのもんだ。――お前、橘屋の徳さんにまかれたな」
「まかれやしねえが、どうしておいらが、若旦那と一緒だったのを知ってるんだ」