Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「お嬢様。お気をお静め遊ばしまして。……」
「いらぬことじゃ。放せ」
「いいえお放しいたしませぬ。今頃お出まし遊ばしましては、お身分に係わりまする。もしまた、たってお出まし遊ばしますなら、一応わたくし共から御家老へ、その由お伝えいたしませねば。……」
「くどいわ。放せというに、放さぬか」
夢中で振り払ったお蓮の片袖は、稲穂のように侍女の手に残って、惜し気もなく土を蹴ってゆく白臘の足が、夕闇の中にほのかに白かった。
「もし、お嬢様。――」
池を廻って、築山の裾を走るお蓮の姿は、狐のように速かった。
「それ、向うから。――」
「あちらへお廻り遊ばしました」
男気のない奥庭に、次第に数を増した女中達は、お蓮の姿を見失っては一大事と思ったのであろう。老も若きもおしなべて、庭の木戸へと歩を乱した。
が、必死に駆け着けた庭の木戸には、もはやお蓮の姿は見られなかった。
「お嬢様。――」
「お待ち遊ばせ」
しかも、年に一度も、駆けたことなどのないお蓮は、庭木戸を出は出たものの、既に脚が釣るまでに疲れ果てて、口の中で菊之丞の名を呼びながら、今はもはや堪えられない歩みを、いずくへとのあてもなしに、無理から先へ先へと運んでいた。