Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「いやだよ直さん、そんなに押しちゃァ転ンじまうよ」
「人の転ぶことなんぞ、遠慮してたまるもんかい。速く行って触らねえことにゃ、おせんちゃんは帰ッちまわァ」
「おッと退いた退いた。番太郎なんぞの見るもンじゃねえ」
「馬鹿にしなさんな。番太郎でも男一匹だ。綺麗な姐さんは見てえや」
「さァ退いた、退いた」
「火事だ火事だ」
人の心が心に乗って、愈調子づいたのであろう。茶代いらずのその上にどさくさまぎれの有難さは、たとえ指先へでも触れば触り得と考えての悪戯か。ここぞとばかり、息せき切って駆け着けた群衆を苦笑のうちに見守っていたのは、飴売の土平だった。
「ふふふふ。飴も買わずに、おせん坊へ突ッ走ったな豪勢だ。こんな鉄錆のような顔をしたおいらより、油壺から出たよなおせん坊の方が、どれだけいいか知れねえからの。いやもう、浮世のことは、何をおいても女が大事。おいらも今度の世にゃァ、犬になっても女に生れて来ることだ。――はッくしょい。これァいけねえ。みんなが急に散ったせいか、水ッ洟が出て来たぜ。風邪でも引いちゃァたまらねから、そろそろ帰るとしべえかの」
「おッと、飴屋さん」
「はいはい、お前さんは、何んであっちへ行きなさらない」