Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

「行きたくねえからよ」

「行きたくないとの」

「そうだ。おいらはこれでも、辱を知ってるからの」

「面白い。人間、辱を知ってるたァ何よりだ」

「何より小より御存じよりか。なまじ辱を知ってるばかりに、おいらァ出世が出来ねえんだよ」

「お前さんは、何をしなさる御家業だの」

「絵かきだよ」

「名前は」

「名前なんざあるもんか」

「誰のお弟子だの」

「おいらはおいらの弟子よ。絵かきに師匠や先生なんざ、足手まといになるばッかりで、物の役にゃ立たねえわな」

そういいながら、鼻の頭を擦ったのは、変り者の春重だった。

三

「おッとッとッと、おせんちゃん。何んでそんなに急ぎなさるんだ。みんながこれ程騒いでるんだぜ。靨の一つも見せてッてくんねえな」

「そうだそうだ。どんなに待ったか知れやァしねえよ。おめえに急いで帰られたんじゃ、待ってたかいがありゃァしねえ」

それと知って、おせんを途中に押ッ取りかこんだ多勢は、飴屋の土平があっ気に取られていることなんぞ、疾うの昔に忘れたように、我れ先にと、夕ぐれ時のあたりの暗さを幸いにして、鼻から先へ突出していた。

が、いつもなら、人にいわれるまでもなく、まずこっちから愛嬌を見せるにきまっていたおせんが、きょうは何んとしたのであろう。