Classici giapponesi con furigana
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このなつ
この夏
宮本 百合子
Leggi この夏 (このなつ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6213 caratteri · 13 schermate
惑えば惑うほど、心は歓喜で一杯になる。
――もう一つ、ここの特徴である虫のことを書いて、この手紙のような独言はやめよう。この家は、茅屋根であるゆえと、何かほかの原因でひどく昆虫が沢山いる。朝夕とも棲みしていると、ひとりでに、アンリ・ファブルの千分の一くらいの興味をそれ等の小さい生物に対して持つようになった。例えば、こうやって書いている今、すぐ前の障子に止って凝っと動かない蜘蛛、味噌豆ほどの大きさの胴も、節で高く突張った四対の肢も、皆あまり古びない鯣のような色をしているのが、私に追っかけられると、どんなに速くかけて逃げるか、また逃げてかなわないと知ると、どんなに狡くころりと丸まって死んだ振りをするか、ややしばらくそれで様子を窺い、人間ならばそっと薄目でも開いて見るように――いや本当に魔性的な蜘蛛はそのくらいなことはやるかもしれない――折を狙って一散走りに遁走するか。一々を実際の目で見ると、生物に与えられた狡智が、可笑しく小癪で愛らしい。いじめる気ではなく、怪我をさせない程度にからかうのは、やはり楽しさの一つだ。
ついこの間の晩、縁側のところで、私は妙な一匹の這う虫を見つけた、一寸五分ばかりの長さで、細い節だらけの体で、総体茶色だ。