Classici giapponesi con furigana
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さようなら
さようなら
田中 英光
Leggi さようなら di 田中 英光 (たなかひでみつ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.251 caratteri · 44 schermate
二十貫近くの肉体が見る間に骨と皮だけになり、張切っていた特号の軍服もダブダブボロボロ、紅顔豊頬、みずみずしかった切長の黒瞳も、毛を毟られたシャモみたいな肌になり顴骨がとびだし、乾いた瞳に絶えず脅えた表情がよみとられた。ぼくは自分自身さえ昼夜を分たぬ戦闘行軍に、食欲と睡眠の快楽だけに支えられ、やっと生きている時だったから、そのような岡田の急激な衰弱振りに同情するよりも、動物的な優越感や軽蔑、憎悪の本能感情が強かった。次の朝、更に岡田は故意でもあるかのように鉄兜と巻脚絆をどこかに棄てていた。
髭ッ面の分隊長は、「気合いを入れてやる」とそんな瞳の吊上った岡田を素裸にし、古参上等兵とふたりで、掌や足の甲、両肩、下ッ腹を紫色に腫れ上るほど革バンドで叩き撲ってから、近くの冷たい泥沼に追いこんだ。今は歯だけが馬みたいに大きく白い岡田が、紫色の歯茎をむきだし、全身を震わせ、それでも金玉だけ大切そうに両手で押え「御免なさい。許して下さい」と喚きながら厭々、水に両肩を沈めるのを、ぼくたち兵隊は弱者への憎悪から反って面白がって見物していたのだ。岡田はその日の行軍の途中、いつの間にか帯革ごと剣や弾盒も棄て、兵隊の魂、陛下の銃と事毎に強調される小銃さえなくしていた。