Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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そのきどをとおって

その木戸を通って

山本 周五郎

Leggi その木戸を通って (そのきどをとおって) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.448 caratteri · 44 schermate

Aozora Bunko

――正四郎は通りすぎながら、娘が屋根の下へはいり、傘をすぼめるのを見、二丁ばかりいってから引返して来ると、娘に気づかれないように、その堂の横から裏へまわって、これも屋根の下へ身をひそめた。

「よく降りゃあがるな」彼は身ぶるいをしながら呟いた、「いつになったらあがるんだ、こいつはひでえことになりやがったぞ」

さっきは有難い雨だと思ったが、事が少しも進展せず、日昏れとともに気温もさがり始め、しかもこう降りどおしに降られてみると、芯まで水浸しになったようで、いきごんでいた気持もどうやら挫けかかって来た。娘はなにをしているのか、――彼は足音をぬすみながら、ごくゆっくりと前のほうへまわっていった。そしてかぶっている笠をぬぎ、堂の角からそっと覗いて見た。娘は縁側に腰をかけ、両肱を膝に突き、顔を手で掩っていた。よく見ると、躯が小刻みにふるえてる、かすかに「おかあさま」と云うのが聞えた。泣いているのだろう、その声は鼻に詰って、いかにも弱よわしく、そして絶望的なひびきを持っていた。

――これも芝居なのか。

ここまで芝居を続けるということが考えられるか。自分にこう問いかけながら、正四郎は胃のあたりにするどい痛みがはしるのを感じた。