Classici giapponesi con furigana
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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
Leggi その木戸を通って (そのきどをとおって) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.448 caratteri · 44 schermate
正四郎の喉でこくっという音がし、眼には狼狽の色があらわれた。
「それはなにかの間違いです」と彼は心もとなげに云った、「そんな女は私にも心当りはありませんし、下城したら早速」
田原権右衛門は遮って云った、「加島家から厳重な抗議が来ている、もしそれがおまえとくされ縁のある女なら、縁談はとりやめになるからそう思え」
「そんなことはありません、間違いにきまっていますから、お役があきしだい下城して、なに者がどうしてそんなことをしたか、よくしらべたうえすぐお知らせにあがります」
「用はそれだけだ」と田原が云った。
勘定仕切の監査は明くる日までかかった。そのあいだまる一日半という時間の経過が、正四郎にとってはもどかしいほど長く、またあまりに短く感じられた。早く事実を慥かめたい気持と、事実に当面するときを延ばしたい気持とが、表と裏から彼を責めたてたのである。
――たしかにおれは模範的人間じゃあない。
謙遜して云うことがゆるされるなら、道楽者と呼ばれる類に属するかもしれない、と正四郎は思った。しかしおれは芯からの道楽者ではない。あやまちを犯したあとでは、もう二度とこんなことはやるまいと、自分に誓うくらいの良心は持っていた。