Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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そのきどをとおって

その木戸を通って

山本 周五郎

Leggi その木戸を通って (そのきどをとおって) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.448 caratteri · 44 schermate

Aozora Bunko

ふさはやわらかに微笑した、「田原さまがなにかお教えになったのでしょう、わたくし存じませんわ」

年寄は面白がって子供にかた言を云わせたがる、困ったものだと思ったが、彼は口には出さなかった。

平松家の庭はかなり広い、正面が松林のある丘で、その上に登ると城がよく見える。百坪ばかりの芝生には、ところどころ刈込んだ玉檜の植込があり、そこから右は梅林で、梅林の先は板塀になっていた。――月は松林の左の端から出た。空には雲が多いので、昇るとまもなく雲に隠れたが、青白く染まった雲が、黒い松林を鮮やかに映しだすさまも、一つの眺めであった。月が昇るとまもなく、ゆかがうとうとし始めたので、ふさは寝かしに伴れていった。

正四郎は独りで飲んでいたが、やがて、芝生で鳴く虫の声が止ったので、振返ってみるとふさが戻って来た。右手に銚子を持って、いつものゆったりとした足どりで近よって来たが、ついそこまで来ると、ふと足を停めた。そのとき雲から月がぬけだして、ふさの顔が明るく浮きあがって見え、正四郎は持っている盃をとり落しそうになった。

――あの晩の顔だ。

ふさの顔は面変りをして硬ばり、大きくみひらかれた眼はなにかを捜し求めるように、庭の一点を凝視していた。