Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

腕時計に時間を見ながら、君江はガードの下を通りぬけて、数寄屋橋のたもとへ来かかると、朝日新聞社を始め、おちこちの高い屋根の上から広告の軽気球があがっているので、立留る気もなく立留って空を見上げた時、後から君江さんと呼びながら馳け寄る草履の音。誰かと振返れば去年池の端のサロンラックで一緒に働いていた松子という年は二十一、二の女で。その時分にくらべると着物も姿もずっと好くなっている。君江は同じ経験からすぐに察して、

「松子さん。あなたも銀座。」

「ええ。いいえ。」と松子は曖昧な返事をして、「去年の暮、暫くアルプスにいたのよ。それから遊んでいたの。だけれどまたどこかへ出たいと思って実はこれから五丁目のレーニンっていう酒場。君江さんも御存じでしょう。あの時分ラックにいた豊子さんがいるから、ちょっと様子を見て来ようと思っているの。」

「そう。あなた、アルプスにいたの。ちっとも知らなかったわ。わたしはあれからずっとドンフワンにいるわ。」

「この春だったか、アルプスでお客様から聞いたことがあったわ。お逢いしたいと思ってもつい時間がないでしょう。あの、先生もお変りがなくって。