Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

*     *     *     *

何やら夢を見ているような気がしていたが、君江はふと目をさますと、暑いせいかその身は肌着一枚になって夜具の上に寐ていた。ビールやウイスキーの壜はそのまま取りちらされているが、二階には誰もいない。裏隣の時計が十一時か十二時かを打続けている。ふと見ると枕もとに書簡箋が一枚二ツ折にしてある。鏡台の曳出しに入れてある自分の用箋らしいので、横になったままひろげて見ると、川島の書いたもので、

「何事も申上げる暇がありません。今夜僕は死場所を見付けようと歩いている途中、偶然あなたに出逢いました。そして一時全く絶望したむかしの楽しみを繰返す事が出来ました。これでもうこの世に何一つ思置く事はありません。あなたが京子に逢ってこのはなしをする間には僕はもうこの世の人ではないでしょう。くれぐれもあなたの深切を嬉しいと思います。私は実際の事を白状すると、その瞬間何も知らないあなたをも一緒にあの世へ連れて行きたい気がした位です。男の執念はおそろしいものだと自分ながらゾッとしました。ではさようなら。私はこの世の御礼にあの世からあなたの身辺を護衛します。