Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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どぶろくげんそう

どぶろく幻想

豊島 与志雄

Leggi どぶろく幻想 (どぶろくげんそう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.452 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

「ストック品が無くなったら、店を閉めて、横浜へ行きます。とにかく、商品は売らなければなりませんからね。千代乃の遺骨は、親戚のひとが持ってゆきました。荷物も持たせてやりました。金もやりました。もうわたし、一人きりです。」

しいんとして、潮の引いた後のようだった。さほど寒くもないのに、周さんがやたらにつぐ火鉢の炭火が、徒らに赤々としている。眠れない深夜のように。意識は茫としているのに、眼だけが冴えていた。酔ったばかりではなかった。

突然、周さんは頓狂な声を立てた。

「あ、ありました。一つ残っています。」

鏡台が残っていたのである。周さんも一緒に使っていたものではあるが、鏡台といえば、やはり千代乃さんに属するのだ。

「鏡は、女の魂とか言われていますね。」

古風な言葉だ。

「あれがある限り、やはり千代乃も残っている。そうではありませんか。」

「まあ、そうかも知れないね。」

周さんの眼を見つめると、周さんも俺の眼を見つめた。互に、何かを探り出そうとするのではなく、一緒に感じ合おうとするのだ。

「ほんとうに、千代乃に逢いましたね。」

囁くような静かな言葉だった。

確かに逢ったようだ。