Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ようかづきのばん

ようか月の晩

宮本 百合子

Leggi ようか月の晩 (ようかづきのばん) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3070 caratteri · 7 schermate

Aozora Bunko

朝のお召は、何とかして、夜明けから昼迄の日の色、草木の様子を、そのまま見るように拵えて貰いたいとおっしゃるのです」

人さし指と親指で暫く顎を撫でながら考えた後、お婆さんは、

「よろしゅうございます」

と答えました。

「拵えて差上げましょう。どうぞ直ぐ糸と布とを下さいませ」

お城の倉からは、早速三巻の七色の絹糸と、真珠のような色をした白絹の布とが運ばれました。それを受取るとお婆さんは、いつもの通り「九十日目に来て下さい」と云って、ぴったり家の扉をしめてしまいました。

九十日目に来た使者は、決して途中で開けないという約束で、一つの小さい茶色の紙包みを渡されました。中に、どんなお召が入っていたでしょう。翌朝、暗いうちに鏡に向って、初めてそれを着て見た時は、流石の王女も、暫くは息もつけない程でした。

着たまま、人魚にでもなってしまうのではないでしょうか。着物の裾には、睡い、深い、海の底の様子が一面に浮上りました。銀の珠でも溶かしたように重く、鈍く輝く水の中では、微かに藻が揺れ、泡沫が立ちのぼります。肩にたれた髪から潮の薫りが流れ出して、足許には渚の桜貝が散りそうです。