Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.236 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

「困ったわね。……口は、とても駄作なのよ。すこし大きすぎるってみながそういいますわ、それは、たしかなの。口を開いて笑うと、奥歯がいつも風邪をひきますの、たいへんな口でしょう。口の話は、これくらいにしておいてちょうだい。……お次はなんですか?」

「歯はどうです」

「歯並びはいいほうよ」

「髪は?」

「棒みたい」

「棒って、なんのことです」

「つまり、パーマネントをかけないもんですから、髪が棒みたいにブラブラさがっていますの。でも、別に気にもしていませんわ。……どう? あたしの顔、だいたいおわかりになって?」

佐伯氏が、楽しそうにうなずいた。

「もう、はっきり眼に見えますよ。あなたがどんなやさしい顔をしていらっしゃるか!」

夕風が吹き出して、湖の面が赤紫色に染った。

こんなことがあってから、疏水へ行くと、佐伯氏がいつもそこでキャラコさんを待っているようになった。二人は湖の岸を遠くまで歩き廻り、くたびれると肱をつき合わして草の上に坐った。キャラコさんは歌をうたったり、本を読んでやったりした。佐伯氏は戦場でたいへん勇敢な働きをしたひとだということだったが、自分では、いっさい戦争の話にふれなかった。