Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9452 caratteri · 19 schermate
いま、ちょっとした過失の贖罪をしているあの気の弱い佐伯氏。丹沢山で会った篤実な四人の学者たち。それから、小っちゃなボクさん。
みな、心のやさしい、親切な人たちばかりだが、どうしてかしら、この絵の青年にたいするような、溺れるようなふしぎな愛情や憧憬をいちども感じたことはなかった。
「ほんとうに妙だわね。……いったい、どうしたというのかしら」
ともかく、その絵の前に立つと、理窟なしに心が弾んで来てどうすることもできない。自分でも、すこし妙だと思うけれど、ひとりでに顔が笑い出して、
「こんにちは、ごきげんいかが?」
と、われともなく、つぶやいてしまう。
「お静かでお羨ましいわ。……いつだって雁来紅は真っ紅だし、陽が照っているし、日暦は、いつも、九日の日曜日だし……。うちあけたところ、あたしも、こんなふうに、ひっそりと暮らすのが理想なのよ。ほんとうに、なんていいんでしょう」
奇妙なことには、キャラコさんが話しかけるのは、長椅子の後ろに立っている青年のほうにかぎるのである。
おっとりと坐っている妹らしいひとには、まだ一度も言葉をかけたことがない。なんだか気ぶっせいで、嫌なのである。