Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.012 caratteri · 48 schermate

Aozora Bunko

「……シャモニイという町のまん中をアルブという川が流れていまして、その上に小さな橋が……」

「あら、素敵ですこと、その橋は、いったい、どんな色に塗ってありますの?」

だいたい、こんなふうだった。

感激家の芳衛さんは、座興までにといって、ヴァイオリンを弾いた。熱心のあまり、すこしキイキイいわせすぎたようだった。演奏が終ると、紳士は音楽の一節をほどよくほめ、来た時と同じように、静かに帰って行った。

三

毎日、天気がつづき、窓をあけると、一月とは思えぬようなおだやかな微風が、かすかな春の息吹きを含んでそよそよと吹きこんで来る。

詩人の芳衛さんが、深い息をしながら、

「木蓮と薔薇と沈丁花の匂いがする」

と、感傷的な声でつぶやいた。ほんとに、このまま春になってしまうかと思われるような暖かさだった。

みな、あんなにのぼせあがったくせに、いちどお茶に招ぶことに成功すると、それからはチャーミングさんのことであまり大騒ぎをしなくなった。わざわざこちらから出かけて行かなくとも、チャーミングさんのほうから時々遊びに来るようになったし、それに、そろそろ学期のはじまりが近づいて来たので、このごろは級や学校の話ばかり出るようになった。