Classici giapponesi con furigana
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ドーヴィルものがたり
ドーヴィル物語
岡本 かの子
Leggi ドーヴィル物語 (ドーヴィルものがたり) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.723 caratteri · 44 schermate
――ちょっと待って、イベット。
小田島は額の汗を急いで拭くとイベットの肩をしっかり掴んで揺ぶった。
――悪かった。僕は矢張り君に対して今迄の僕で居ようね、イベット。
――ええ、有難う…………でもあなたの真当の処が判って見れば…………それにもう何もかも最後のお別れだわ。
――済ま無い、悪かった。
――いいえ、私こそひとをそんな勝手な相手にして置こうなんて虫が好過ぎたのよ。私こそ済まなかったのよ。でも私、幾度も云うようだけど上べはこんな勝気で陽気な女だけど、どうかすると、まるで堅い人間の壁の様になる時があるのよ。そしてその中へ孤独の自分を閉じ込めて息を吐かせない時があるのよ。
――僕もそういう時の君によく出逢った。僕は陽気な君より、そういう時の冷たい君が好きだった。
小田島は、ごくりと一つ生唾を呑んだ。
――ねえ、イベット。国事探偵なんて君にはあんまり大役ですよ。君はもうそんな危険から抜け出してもっと気楽な身分になりなさい。君の為に遺産の遺言状まで書いて居るお爺さんさえ有る相じゃないか。早く巴里へ行ってそのお爺さんの養女にでもなって気楽な身分におなんなさい。
イベットがそっと眼に当てたハンカチが、涙を拭いて居るように小田島には見えた。