Classici giapponesi con furigana
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ヒルミふじんのれいぞうかばん
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
海野 十三
Leggi ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (ヒルミふじんのれいぞうかばん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.412 caratteri · 29 schermate
彼女は早くも、若い夫万吉郎の仇し心に気がついた。
と云って、万吉郎もすでに知りつくしているように、ヒルミ夫人はいかに若い夫が仇しごとをしようとも、彼を離別するなどとは思いもよらぬことだった。いかなる手段に訴えても、恋しい夫万吉郎を自分の傍にひきとめて置かねばならないと思った。もし万吉郎が、自分のそばを一日でも離れていったときには、自分はきっと気が変になってしまうであろう。
そんな風に、可憐なるヒルミ夫人は若き夫万吉郎のことを思いつめていたのである。
臨床実験のことも、病院の経営のことも、いまや彼女の脳裡から次第次第に離れていった。万吉郎を家から抜けださせないこと、そして他の女に奪われないこと、その二つのことがらを常々心にかけて苦労のたけをつくしていた。
だから、たまたま万吉郎が外出するときなど、他人には到底みせられないような大騒ぎが起った。ここには明細にかきかねるが、とにかくヒルミ夫人は万吉郎の身体に蛭のように吸いついて、容易に離れようともしなかったのである。万吉郎はちょっと髪床にゆくのだというのに、このばかばかしい騒ぎであった。
そんなことが、万吉郎の心をヒルミ夫人からずんずん放していった。