Classici giapponesi con furigana
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せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
Leggi 一九三二年の春 (せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.942 caratteri · 44 schermate
を八十日に一度、粗悪な魚のきりみ一度。食いかけの入った干物一度、稀に豚のコマ切れのまざった牛蒡の煮ものは、御馳走である。食物の粗悪なことは留置場の一般的不平であった。弁当が配られると、
「チェッ! 何と思ってやがるんだ。出たら一つこの弁当屋にあばれ込んでやるから!」
などという声がした。しかし当時駒込署には左翼の同志が少数で、その一般的不平をとりまとめ、例えばメーデーの監房内闘争にまで高めるというようなことはされなかった。大体、駒込署の弁当が実質以下であることには理由があった。検束拘留された者の弁当代は留置期間警察もちである。ところが拘留があけても官僚的警察事務の関係で、その朝釈放されず、さらに一日または二日と引っぱられる者がしばしばある。署の会計係は帳面づらにしたがって賄いに支払ってゆくから、賄は警察の形式主義によって年に何百本かの弁当を食い倒されていなければならない実情にある。警察の賄などこそ零細な利潤目あての営業であるから、一食八銭のうちから利潤と食い倒される分の埋め合わせとを差し引き、留置人には五銭にも足りないような劣悪な弁当を食わせることになっているのである。