Classici giapponesi con furigana
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いっこく
一刻
宮本 百合子
Leggi 一刻 (いっこく) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1103 caratteri · 3 schermate
制限時間はすぎているのに、電車が来なくて有楽町の駅の群集は、刻々つまって来た。
「もうそろそろ運動はじめたかい」
人に押されて、ゆるく体をまわすようにしながら、蔵原さんが訊いた。
「これからだ」
江口さんは栃木県で立候補した。新しくなろうとして熱心な村の人々にとって、根気よい産婆役をしているのであった。
「しかしね、モラトリアムでいくらかいいかもしれないよ。――この間うちの相場は、二百円だった」
「一票が、かい?」
「ああ。百円じゃいやだというそうだ。東京じゃ米で買う奴が多いらしいね」
そこへ、一台電車が入って来た。プラットフォームの群集は、例のとおり、止りかかる電車目がけて殺到した。すると、高く駅員の声が響いた。
「この電車は、南方より復員の貸切電車であります。どなたも、おのりにならないように願います」
丁度目の前でドアが開いて、七分通り満員の車内の一部が見えた。リュックをかついで、カーキの服を着て、ぼんやりした表情の人々の顔が、こちらを向いている。ああこれが、有楽町か、という心もちの動きの出ている眼もないし、ひどい人だ、と思って投げられている視線もない。