Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひとにぎりのかみのけ

一握の髪の毛

田中 貢太郎

Leggi 一握の髪の毛 (ひとにぎりのかみのけ) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6548 caratteri · 14 schermate

Aozora Bunko

「さあ」

「帰りましょう、あなたも帰ってなんとかしなさいよ」

「そうですね」

「帰りましょう、帰りましょう、わたしも早く帰ると都合がいいわ」

章一ももうそうした世界にいるのが厭になっていた。

章一は目黒駅まで来て別れて往く女に心ない挨拶をしてそのまま自動車に乗った。

章一は白山に住む老婦人の許へ往くところであった。こうした場合に章一の往く処はその女の許を措いて他にはなかった。学校を卒業してごろごろしている時、友人の紹介で梵妻あがりで小金を溜めていたその女の許へ金を借りに出入して関係しているうちに、女の田舎のもので女学校へ往っていた今の細君と知りあいになっていっしょになったものであった。

もう十一時であった。章一は電車通りで自動車をおりて爪さきあがりになった狭い横町を往って、社の裏手の樹木の下になったその家を叩いた。

「もう、寝たのですか」

裡では婢の声がした。

「だあ、れ、何方」

「僕だよ、木村、牛込の」

「おや、木村さん」

間もなく玄関のガラス戸が開いたので章一は中へ入った。

「おい、お客さんがあるのか」

「こんなに遅いのに、お客さんはありませんわ」

「朝までいるお客さんだよ」