Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いっとう

一灯

太宰 治

Leggi 一灯 (いっとう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3052 caratteri · 7 schermate

Aozora Bunko

兄は、自動車の窓から、街の奉祝の有様を、むさぼるように眺めていた。国旗の洪水である。おさえにおさえて、どっと爆発した歓喜の情が、よくわかるのである。バンザイ以外に、表現が無い。しばらくして兄は、

「よかった!」と一言、小さい声で呟いて、深く肩で息をした。それから、そっと眼鏡をはずした。

私は、危く噴き出しそうになった。大正十四年、私が中学校三年の時、照宮さまがお生まれになった。そのころは、私も学校の成績が悪くなかったので、この兄の一ばんのお気に入りであった。父に早く死なれたので、兄と私の関係は、父子のようなものであった。私は冬季休暇で、生家に帰り、嫂と、つい先日の御誕生のことを話し合い、どういうものだか涙が出て困ったという述懐に於て一致した。あの時、私は床屋にいて散髪の最中であったのだが、知らせの花火の音を聞いているうちに我慢出来なくなり、非常に困ったのである。嫂も、あの時、針仕事をしていたのだそうであるが、花火の音を聞いたら、針仕事を続けることが出来なくなって、困ってしまったそうである。兄は、私たちの述懐を傍で聞いていて、

「おれは、泣かなかった。