Classici giapponesi con furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate
……逃げる早さだって女なぞより早いかも知れないから、自分の病室に帰って来て寝ておれば、誰一人気づかないであろう。……俺は片足を無くした代りに、ドンナ悪事をしても決して見付からない天分を恵まれたのかも知れない……なぞと考えまわすうちに、モウ玄関の処まで来てしまった。
……これは拙かった。こっちへ来てはいけなかった。やはり一先ず自分の病室に帰って、裏の廊下伝いに行かなければ……と私はその時に気が付いたが、そう思い思い壁の蔭からソッと首をさし伸ばしてみると、いい幸いに重症患者が居ないと見えて、玄関前の大廊下には人っ子一人影を見せていない。玄関の正面に掛かった大時計が、一時九分のところを指しながら……コクーン……コクーン……と金色の玉を振っているばかりである。
その大きな真鍮の振り子を見上げているうちに、私の胸が云い知れぬ緊張で一パイになって来た。
……グズグズするな……。
……ヤッチマエ……ヤッチマエ……。
と舌打ちする声が、廊下の隅々から聞えて来るように思ったので、我れ知らずピョンピョンと玄関を通り抜けて、向うの廊下のマットに飛び乗って行った。そうして昼間見た特等一号室の前まで来ると、チョットそこいらを見まわしながら、小腰を屈めて鍵穴のあたりへ眼を付けたが、不思議な事に鍵穴の向うは一面に仄白く光っているばかり