Classici giapponesi con furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate
私はそれでもジッと気を落ち着けて鋏を取り直した。軽い緞子の羽根布団を、寝床の下へ無造作に掴み除けて、未亡人の腹部に捲き付いている黒繻子の細帯に手をかけたのであったが、その時に私はフト奇妙な事に気が付いた。
それは幅の狭い帯の下に挟まっている、ザラザラした固いものの手触りであった。
私はその固いものが指先に触れると、その正体が未だよくわからないうちに、一種の不愉快な、蛇の腹に触ったような予感を受けたので、ゾッとして手を引っこめたが、又すぐに神経を取り直して両手をさしのばすと、その緩やかな黒繻子の帯を重なったまま引き上げて、容赦なくブツリブツリと切断して行った。そうしてその下の青い襦袢の襟に絡まり込んでいる、茶革のサック様のものを引きずり出したが、その二重に折り曲げられた蓋を無造作に開いて、紫天鵞絨のクッションに埋められた宝石行列を一眼見ると、私はハッと息を呑んだ。……生れて初めて見る稲妻色の光りの束……底知れぬ深藍色の反射……静かに燃え立つ血色の焔……それは考える迄もなく、男爵未亡人の秘蔵の中でも一粒選りのものでなければならなかった。生命と掛け換えの一粒一粒に相違なかった。