Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひとあしおさきに

一足お先に

夢野 久作

Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate

Aozora Bunko

それは副院長の手から、床の上の暗がりに辷り落ちた、茶革の懐中の音に相違無かった。

しかし私はその方向には眼もくれなかった。のみならず、その音を聞くと同時にイヨイヨ自分の無罪を確信しつつ、メチャクチャに相手をタタキ付けてしまおうと焦燥った。

「……そうなんだ。それに違い無いのだ。俺に散歩を許したのは誰でもない貴様なんだ。標本室の扉の鍵をコッソリと開けておいたのも貴様だろう、クロロフォルムの瓶をあすこに置いたのも貴様かも知れない。……男爵未亡人を凌辱したのも貴様に違い無い。そうして残虐を逞ましくして茶革の懐中を奪って、俺の処へ……イヤ……イヤ……そうじゃない。そうじゃないんだ。……俺は決して嘘は云わない。俺は今夜偶然に夢中遊行を起したのだ。そうしてあの室に行って、四人の女を麻酔さして、未亡人の繃帯と帯とを切ったに違い無いのだ。けれども、それ以上の事は何もしていなかった……それ以上犯罪に属する仕事は……みんな貴様がした事なんだ。宿直員の話でも、その宝石に残っている俺の指紋の一件でも、ミンナ貴様の出まかせの嘘ッパチなんだ。貴様はただ偶然に、昨日の昼間、標本室に這入って行く俺の姿を見付けたに過ぎないんだ。