Classici giapponesi con furigana
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Leggi 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) di 牧 逸馬 (まきいつま) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 251.305 caratteri · 498 schermate
「ほんとうに、何が這入っているんだろう――」
近処の山間には酒の密造をやっている者が尠くない。そんなところからでも仕入れて来て、自棄酒をあおっているのだろう――皆そう言い合った。ことによると、ああして戸閉めをして自分で葡萄酒でも密醸してそっとブダペストのカフエあたりへ売り込んでいるのかも知れない。この噂が、唯一人キスと親しくしているリットマンの耳に這入って、リットマンは或日カルマン婆さんが見た五つの桶のことと、それに関する町の人の取り沙汰をキスに話した。
笑って答えていた。
「面白いことを言うものですな。酒の密造などと、私はそんな危い橋を渡る人間ではない」全く彼は、神経質なほど几帳面な性格だった。「あれは揮発油ですよ。自動車に使う揮発を、危険ですから、五つの錻力の桶に入れて、ああして二階へ上げて置いたんです。識合いのブダペストの石油屋が破産しましてね、何うせ要るものですし、あまり安価いから五桶ほど引き取ったんですが、正直のところ、すこし持て余していますよ」
これが町のゴシップを消火するに役立って、間もなく人々は、この、キスの家にある五個の錻力製の大きな桶のことを、忘れるともなく忘れた。