Classici giapponesi con furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Leggi 世相・競馬 (しがつばか) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.112 caratteri · 39 schermate
机の上には五六個の時計があった。一つずつ手に取って黙々とネジを巻いているその手つきを見ていると、ふと孤独が感じられた。
一つ風変りな時計があった。側は西洋銀らしく大したものではなかったが、文字盤が青色で白字を浮かしてあり、鹿鳴館時代をふと思わせるような古風な面白さがあった。
「いい時計ですね。拝見」
と、手を伸ばすと、武田さんは、
「おっとおっと……」
これ取られてなるものかと、頓狂な声を出して、その時計を胸に抱くようにした。
「――どうもお眼も早いが、手も早い。千円でも譲らんよ。エヘヘ……」
胸に当てて離さなかった。浴衣の襟がはだけていて、乳房が見えた。いや、たしかに乳房といってもいいくらい、武田さんの胸は肉が盛り上っていた。
そこへ、都新聞の記者が来て、
「満州へ行かれるんですか。旅行日記はぜひ頼みますよ」
「うえへッ!」
武田さんは飛び上った。
「まず、満州へ行く感想といった題で一文いただけませんか」
「誰が満州へ行くんだい?」
「あなたが――。今日のうちの消息欄に出てましたよ」
「どれどれ……」
と、記者の出した新聞を見て、
「――なるほど、出てるね。エヘヘ……。