Classici giapponesi con furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Leggi 世相・競馬 (しがつばか) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.112 caratteri · 39 schermate
一本道の前方にかすかにアパートの灯が見えた。遠い眺めだった。佐伯は街で買って来た赤い色の水歯磨の瓶を鼻にくっつけながら歩いた。その匂いが忘れていた朝を想い出させた。あたりの暗闇が瓶の色に吸いこまれ、佐伯の心は新しい道を発見したというよろこびに明るかった。だが、佐伯はいきなりぎょっとして立ちすくんだ。どこからかヒーヒーと泣き苦しむ声がかすかに聴えて来たのだ。佐伯は暗がりに眼をひからせた。道端に白い仔犬が倒れているのだった。赤い血が不気味などす黒さにどろっと固まって点点と続いていた。自動車に轢かれたのだなと佐伯は胸を痛くした。犬の声はしのび泣くように蚊細かったが、時どきウーウーと濁った声を絞り上げていた。だらんと伸びて、血まみれの腸がはみだしていた。ピクピク動くたびに、ぶらんとした首がそこらじゅう這い廻るようであった。これでもまだ生きて泣いているのかと、佐伯には仔犬の最後のもがきがいじらしかった。佐伯は永いこと感動して眺めていた。仔犬の生きている声はいっかな消えようとせず、必死になってピクピク動いていた。その不死身の強さが佐伯の胸をうった。肺病なんかで簡単に死んでたまるものか、もっとほかに死に方があるんだと奇妙に昂奮して、ふと眼を上げると、アパートの門燈のまわりに深い夜のしずけさがじーんと音を立てて渦まいて