Classici giapponesi con furigana
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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
Leggi 中谷宇吉郎集 第八巻 (『ケプロン・くろだのこうそう』について) di 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 85.890 caratteri · 178 schermate
ただ見たところがちょっと貧弱なために、こうばく蟹の方は、値段がひどく安い。これはなにも今日の貨幣経済の世の中だけの話ではなく、私たちの子供の頃から、既にそうであった。北陸の片田舎で育った私など、子供の頃を思い出してみると、ずいぶん質素な生活をしていたものである。牛肉などは、一月に一度町へはいると、店屋の人が、小さい赤い旗を立てて、町をねり廻って、牛肉の入荷をふれて歩くような次第であった。
子供たちのおやつは、季節毎にちがっていて、秋になればさつま芋、冬になると、このこうばく蟹であった。真赤にゆでたこうばく蟹を一ぴき、原形のままでもらって、それを庖丁など全然使わないで、手でちぎって食うのが、ならわしであった。まず甲羅を剥いで、その中にある「味噌」をなめる。この味噌はちょうどコキュールの白くぶよぶよしたものもおいしいが、あの味の中から、人工的な部分を取り除いて、天然におきかえたとすると、このこうばく蟹の「味噌」の味になる。
ところがこの「味噌」はまだ、全くの序の口で、背の両側の肉の中にある内子が、こうばく蟹の真髄である。橙色を帯びた鮮かな赤色の、このこちこちとした内子の味は、ほかに類例のない不思議な味をもっている。