Classici giapponesi con furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Leggi 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.344 caratteri · 96 schermate
四
保平はいよいよ薄気味が悪くなって、翌日、なにやかやと言いまわして泰文の邸から逃げだした。京にいる間、刺客を恐れてたえずビクビクしていたが、どうしたのか何事もなく、その秋、命つつがなく安房へ帰り着いた。
朝霞のほうはどうだったかというと、このほうも恐れていたようなことはなにも起きなかった。それどころかいままでにないほどのご愛想で、ときどき橋廊下を渡って葵ノ壺へでかけ、調子をはずした大音声で、二時間ばかりずつ世間話をするようになった。朝霞は泰文の気持を忖度しかねて悩んでいたが、そういうことも度重なると、つい心をゆるし、将来の不幸を見越して、子供たちのために別にしてあった……どんなに責められても言わなかった隠し田のありかを白状してしまった。
「これは光麻呂と娘の分なのですから、そこのところをどうぞ」
「わかっている。俺にあずけておけば、悪いようにはしない」
泰文は素ッ気ない顔でうなずいてみせたが、これははじめから予期していたことだったのである。
四
朝霞と保平のいきさつはこれで無事に落着するはずだったが、事件は意外なところから新に掻き起されることになった。
朝霞の兄弟と泰文の弟の権僧正光覚は融通のきかない武骨者ぞろいで、こんどの事件の始末のつけかたをあきたらなく思っていた。