Classici giapponesi con furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Leggi 二つの庭 (ふたつのにわ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.492 caratteri · 389 schermate
樹々の緑色が黒とまじり合って濁って感じられるのではなく、まばゆい純粋な新緑の美しさはそのままくっきり目に映っており、それが伸子の心に来る途中に、しまったシャッタアのように強情な黒さがあるのであった。
喪にいる、という言葉を、伸子は思い出した。喪の黒さとは、こういうものかと思った。しかし、伸子は悲しんでいるのではなかった。一つも悲傷はなかった。ただ奇妙な、不自然な、信じることの出来ない混乱が充満している。誰からも話しかけられず、考えの内側に好奇心をもたれず、きょう一人でいられることが伸子にうれしかった。
きのう、動坂の家で多計代が越智と結婚しようと思うといい出したとき、伸子は全力をつくしてその不可解なことを、わかろうと努力した。自分としては必死にわかろうと努力しながら、多計代に対しては、最大の慎重さをもとめた。本能的にそうせずにいられなかったほど、越智と母との結婚という観念は伸子にうけとりがたかった。
思えば、不思議でもある。ああやって長い間、非常に集中してそのことについて母と話していたのに、その間に一ぺんも、良人たる父の立場というものが伸子の感情に訴えて来なかった。