Classici giapponesi con furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Leggi 二つの庭 (ふたつのにわ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.492 caratteri · 389 schermate
でも、保のこころのうちは、果してそれだけだろうか。うれわしげに頬杖をついている伸子の顔を眺めながら、素子はそのまましばらくタバコをふかしていたが、やがてきめた以上はそのようにという風に、
「さて、いよいよ旅費が問題だね」
ときりだした。
「名案はないものかな」
伸子のきもちは保から実際問題にうつされた。
行こうという決心がかたまりかかるにつれて、伸子も当然旅費のことは考えた。この旅行は、はじめっからしまいまですっかり自分のものとして経験し、どういう結果についても掣肘をうけたくない気持がした。伸子は、どうしても自分の力で、旅費をつくらなければならなかった。そのためには、新聞社や雑誌社と契約して海外特派員となる方法があった。けれども、伸子にどんな特派員らしい記事がかけるというのだろう。言葉さえろくに出来ないのに、経済だの政治について、なんにも知っていないのに。
「汽車賃ぐらい、あの月がけで何とかなるけれどね」
それは素子が主張してつづけていた、小さな銀行の集金貯金のことであった。
旅費の工面はあてがないまま、伸子たちは、ともかく旅券の申請をした。夏草のもうすがれはじめた庭の軒さきで、かわりばんこに撮った下手な素人写真を添えて書類を出した。