Classici giapponesi con furigana
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ふたつのしょうがつ
二つの正月
寺田 寅彦
Leggi 二つの正月 (ふたつのしょうがつ) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2947 caratteri · 6 schermate
英国の婆さんは英語のわからぬ御者というものがこの世に存在し得るという事実だけは夢想することも出来ないように見えた。しかし裾野の所々に熟したオレンジの畑は美しく、また日本の南国に育った自分にはなつかしかった。フニクラレの客車で日本人らしい人に出会って名乗り合ったら、それは地質学者のK氏であった。このケーブル線路の上の方の部分は近頃の噴火に破壊されていたので徒歩の外に途はなかった。風があまりに強いために他の乗客は皆登山を断念して引返したので結局この二人の日本人だけが登ることになった。地理学書でもまた物語でも読んで知っていたアトリオ・デル・カヴルロとかソマムとか、こういう名前も何となく嬉しく、また地質学者から教わる色々の岩石の名前も珍しかったと見えてよく覚えている。紺碧のナポリの湾から山腹を逆様に撫で上げる風は小豆大の砂粒を交えてわれわれの頬に吹き付けたが、ともかくも火口を俯瞰するところまでは登る事が出来た。下り坂の茶店で休んだときにそこのお神さんが色々の火山噴出物の標本やラヴァやカメーの細工物などを売付けようとしたが、こしらえもののいかものだけはわが地質学者を欺く訳に行かないのがおかしかった。