Classici giapponesi con furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Leggi 人情武士道 (しぐれがさ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.700 caratteri · 51 schermate
宗七はすっと立上った。
「けれども、私はこうやって貴女のお世話になるのは厭なんだ。迷惑と云いたいくらいなんだ。それだけは承知していて貰いますよ」
「宗さん、それはあんまりよ」
お雪は驚いてすり寄った。「あたしはこんな物知らずで、満足にお洗濯ひとつ出来ないけれど、少しでも貴方に御不自由をさせまいと思ってずいぶん苦労をしているわ、……迷惑だなんて、……そんな、あんまりだわ」
「お雪さん、私は……宗七はねえ」
宗七はお雪の噎びあげる声に振返って、「宗七は職人だ、……私は自分の命を仕事に打込んでるんだ、この仕事が満足に仕上るまでは、義理も人情も捨てているんだ、……職人には仕事の他に自分の気持を乱されるのが一番迷惑なんですよ、……だが」
と云ったがすぐ、
「だが……こんなことを、今更ら云っても仕様がねえ」
投遣りな調子で呟くと、そのままふらりと外へ出て行った。
藤吉から縁を切ったと云われて以来、宗七は佐野屋へ足踏みの出来ない体になっていたが、お雪はそれからも三日にあげず訪れては、濯ぎ物や家の掃除など、細々した身の廻りの世話をしてくれる。……いつかは婿に、という話のあった仲だ、お雪のいじらしい心根は見るも痛ましいくらいであったが、宗七の頑な心は娘の気持を察する暇もないほど、仕事に対する情熱でいっぱいだった。