Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

Leggi 偸盗 (ちゅうとう) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.934 caratteri · 97 schermate

Aozora Bunko

彼は、乱れた髪を微風に吹かせながら、馬上に頭をめぐらして、後にののしり騒ぐ人々の群れを、誇らかにながめやった。

それも無理はない。彼は、味方の破れるのを見ると、よしや何物を得なくとも、この馬だけは奪おうと、かたく心に決したのである。そうして、その決心どおり、葛巻きの太刀をふるいふるい、手に立つ侍を切り払って、単身門の中に踏みこむと、苦もなく厩の戸を蹴破って、この馬の覊綱を切るより早く、背に飛びのる間も惜しいように、さえぎるものをひづめにかけて、いっさんに宙を飛ばした。そのために受けた傷も、もとより数えるいとまはない。水干の袖はちぎれ、烏帽子はむなしく紐をとどめて、ずたずたに裂かれた袴も、なまぐさい血潮に染まっている。が、それも、太刀と鉾との林の中から、一人に会えば一人を切り、二人に会えば二人を切って、出て来た時の事を思えば、うれしくこそあれ、惜しくはない。――彼は、後ろを見返り見返り、晴れ晴れした微笑を、口角に漂わせながら、昂然として、馬を駆った。

彼の念頭には、沙金がある。と同時にまた、次郎もある。彼は、みずから欺く弱さをしかりながら、しかもなお沙金の心が再び彼に傾く日を、夢のように胸に描いた。