Classici giapponesi con furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Leggi 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 160.664 caratteri · 323 schermate
「不思議な事だ。何んという事だ。どう解釈をしたものだろう? さも心地よいと云ったような、憎い相手の苦しむのがさも嬉しいと云ったような、惨忍極まる笑い声! 悪意を持った笑い声! ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、まだ笑っている。俺も何んだか笑いたくなった。俺の心は誘惑られる。ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、まだ笑っている……。俺も笑ってやろう。ヒ、ヒ、ヒ、ヒ……ヒ、ヒ、ヒ、ヒ」
葉之助は笑い出した。不思議な笑いに誘惑られて彼もとうとう笑い出した。
と、さらに不思議なことには、姿の見えない笑い声が、漸次こっちへ近寄って来る。部屋の隅と思ったのが、畳の上から聞こえて来る。畳の上と思ったのが、葉之助の膝の辺からさも鮮かに聞こえて来る。やがてとうとうその声は彼の腕から聞こえるようになった。
「奇怪千万」と葉之助は、やにわに袂を捲り上げた。肉附きのよい白い腕がスベスベと二の腕まで現われたが、そこに上下二十枚の人間の歯形が付いている。これには別に不思議はない。幼年時から葉之助の腕にはこういう歯形が付いていたからで、驚く必要はないのであるが、その歯形が今見れば女の顔と変わっている。眉を釣り上げ眼をいからせ唇を左右に痙攣させ、憤怒の形相を現わしている様子が、奇病人面疽さながらである。