Classici giapponesi con furigana
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むいかづき
六日月
岩本 素白
Leggi 六日月 (むいかづき) di 岩本 素白 (いわもとそはく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2584 caratteri · 5 schermate
正面の石段を上って祇園の社へはいる。春は人出でいきれ返るというが、私はいつも夏か秋にのみ京都へ来るので、その春の雑沓を知らない円山公園へ、此の社を抜ける。さして狭からぬ境内ではあるが、神寂びた余りの冷たさはなく、秋の今宵の静けさの中にも、何処か一脈の温かさ柔かさを湛えて居るのは、立て連ねた灯籠の灯の色からばかりではなく、下の華やかな町の空気が此処まで延びて居るせいであろう。それでも参詣人の石畳を歩く音、賽銭箱に小銭の当る音までが、遠く離れた辺りへ幽かに聞えて来るのも流石に秋らしい。薄い夜霧のかかった参道の傍に、銭を入れると自然と箱から出るおみくじを、灯籠の灯に読んで居るのはただの女である。然し場所柄だけに、多少の風情がないでもない。春は唯この一ともとに雑沓するという老木の枝垂れ桜は葉も落ちて、ただ黒々とさながら宵寝という姿であるのを、疎らな人通りの誰顧みる者もなく、平野屋の栗めしの立て看板が夜目にも白々として、少し前までは時刻がらごった返して居たらしいのが、今は掛けつらねた提灯のみが明るく、少しは静かになった風である。知恩院へはいる横の門は、昼間に引換えて人通りも無く、まるで大きな洞の口のように暗く開いて居るので、其処から引返して、がらんとした角の茶亭の白けた灯を右に見て、高台寺の方へ歩いて行く。