Classici giapponesi con furigana
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はつつぼみ
初蕾
山本 周五郎
Leggi 初蕾 (はつつぼみ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.525 caratteri · 35 schermate
五
「でもこれで迷うこともなくなったわ、稼げるうち面白く稼いで、あとは島喜さんのご隠居に頼むんだ、子供が生れたら、どこかへ遣って、身軽になって、田河屋をりっぱに売りだしてやろう」
夜具の衿をひきあげて、それで涙を拭きながら、お民は自分を唆しかけるようにそう云った。
「そしてもう、好いた好かれたはこれっきりだよ、お民ちゃん、これからは情のない女になって稼ぐんだ、しっかりするんだよ」
五
志摩のくに鳥羽の城下から、日和山を西へ越えたふところに西沢という閑静な村がある。鳥羽とは僅かな距離だが、山ひとつ越えるために、環境が鄙びているし、うちかさなる丘陵のかなたに、朝熊山をのぞむすぐれた眺めがあるので、春秋には城下の人たちがよく遊山に来た。……その村のうちに古くから「島喜」の隠居所があった。ほんの小さなありふれた建物で、厨を入れて二十坪ばかりしかない、庭もざっとしたもので、白ちゃけた石が五つばかり、あとは家をとり巻いて松が林を作っていた。久しく閉まったきりで、時どき人が掃除にくるくらいのものだったが、去年の冬から武家の老夫婦が来て、そのままもう一年ちかく住みついていた。