Classici giapponesi con furigana
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はつつぼみ
初蕾
山本 周五郎
Leggi 初蕾 (はつつぼみ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.525 caratteri · 35 schermate
……そのとき藤屋の主婦はふじむらから、お民を五年間の年期奉公にして五両という金を取っていた。母はそれから九十日ほどして亡くなったが、医者にはもちろん、薬もろくろくのませず、葬らいなど真似ごとというにもひどいものだったのに、それが更に三両なにがしという借分になって証文に書き込まれた。
こういう始末を知ったのは、お民が十五になって、客の接待に座敷に出るようになったときのことだった。幼ない頃から世間はこわいもの、人は信じられないものと考えていたので、そうわかっても今さら藤屋を恨む気持はなかった。それよりも、すでに自分が美しく生れついたこと、客たちに人気があるので、家人が大事にし始めたことなどを知って、云いようのない自信が身内にうまれ、新しい明け昏れのほうへとぐんぐん惹かれていった。
……それからの三年あまりは夜の明けたような生活だった。ふじむら小町などと呼ばれて、客もよく付き、面白いほどみいりがあった。通って来る客のなかには好きな相手もできたし、伊勢の山田の御師の息子で、仁太夫という名のおとなしい若者には、ずいぶん危いところまでいったが、「山越」の店でおじぎをした幼ない日のこと、物置のような小屋の隅で冷たくなっていた母のことを思いだして、なんだいという気持になり、間もなくきっぱりと別れてしまった。