Classici giapponesi con furigana
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ちよこ
千世子
宮本 百合子
Leggi 千世子 (ちよこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N3. Tocca una parola per il significato.
N3 · intermedio · kanji e kana moderni · 83.104 caratteri · 164 schermate
感情の走った千世子の心の中に木の肌、草の葉、花の蕊なんかにこもって居る目に見えない物が心をなぜる様にくすぐる様に快いものになって入って来た。
千世子の目から涙がこぼれた、紙の上に丸あるいしおらしげなしみを作った。心の中に「今の心ほどしまった純な創作をどうせ私に作る事は出来ない、この紙はその涙のあとで、下らない字が書かれるよりよろこんで居る――私も又この方に満足して居る」
と思って居た。
千世子が感じて涙をこぼす時は、たった一しずくやけそうにあついのをこぼすかそれでなければ夕立の様に心まで心のそこまでひたりそうにこぼすかどっちかであった。
その時は一しずくほかこぼさない涙であった。千世子の心の中には限りないよろこびと感謝と目に見えないものを祝福する心でみちみちて居た。
「アアア私は何て幸福なんだろう、私はどうしてこううれしくなれる心をもって居るんだろう」
ほほ笑みながらくびをふってはね上る様な心になって居た。
「Hさん、まだ悲しいかおをしていらっしゃる?」
戸の外からこえをかけた。
「いいえ、いらしゃい笑ってますよ」
Hはまるで異った心持になったらしい声で立く云った。