Classici giapponesi con furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Leggi 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 81.668 caratteri · 164 schermate
懐古園内の藤、木蘭、躑躅、牡丹なぞは一時花と花とが映り合って盛んな香気を発したが、今では最早濃い新緑の香に変って了った。千曲川は天主台の上まで登らなければ見られない。谷の深さは、それだけでも想像されよう。海のような浅間一帯の大傾斜は、その黒ずんだ松の樹の下へ行って、一線に六月の空に横わる光景が見られる。既に君に話した烏帽子山麓の牧場、B君の住む根津村なぞは見えないまでも、そこから松林の向に指すことが出来る。私達の矢場を掩う欅、楓の緑も、その高い石垣の上から目の下に瞰下すことが出来る。
境内には見晴しの好い茶屋がある。そこに預けて置いた弓の道具を取出して、私は学士と一緒に苔蒸した石段を下りた。静かな矢場には、学校の仲間以外の顔も見えた。
「そもそも大弓を始めてから明日で一年に成ります」
「一年の御稽古でも、しばらく休んでいると、まるで当らない。なんだか串談のようですナ」
「こりゃ驚いた。尺二ですぜ。しっかり御頼申しますぜ」
「ボツン」
「そうはいかない――」
こんな話が、強弓をひく漢学の先生や、体操の教師などの間に起る。理学士は一番弱い弓をひいたが、熱心でよく当った。