Classici giapponesi con furigana
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はんにちあるき
半日ある記
寺田 寅彦
Leggi 半日ある記 (はんにちあるき) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2975 caratteri · 6 schermate
今戸の渡と云う名ばかりは流石に床し。山谷堀に上がれば雨はら/\と降り来るも場所柄なれば面白き心地もせらる。さりとて傘持たぬ一同、たとえ張子ならずとも風邪など引いては面白からねば大急ぎにて雷門前まで駈け付く。先を争いて馬車に乗らんとあせる人狂気のごとく、見る間に満員となりて馳せ出せば友にはぐれて取り残さるゝ人も多し。来る馬車も/\皆満員となりて乗る折もなし。婦人連れの事なれば奮発してようよう上等に乗ればこれもやはりギシつみにて呼吸も出来ざるをようようにして上野へ着けば雨も小止みとなりける。こゝに一行と別れて山内に入る。
人ようよう散じて後れ帰るもの疎なり。向うより勢いよく馳せ来る馬車の上に端坐せるは瀟洒たる白面の貴公子。たしか『太陽』の口絵にて見たるようなりと考うれば、さなり三条君美の君よと振返れば早や見えざりける。また降り出さぬ間と急いで谷中へ帰れば木魚の音またポン/\/\。(明治三十二年九月)