Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いんしょう

印象

小酒井 不木

Leggi 印象 (いんしょう) di 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8142 caratteri · 17 schermate

Aozora Bunko

「先生、わたしはくやしいです。どうか、先生、先生の手で、このお腹の子を無事に生ませて下さい。私はこの子が無事に生れさえすれば、今、死んでもかまいません。どうぞ先生、この子を殺さぬようにして下さい」

こう言ってから、夫人は、にわかに咳をはじめました。そうして、右手を離して、口を掩いました。秋の末のこととて、庭の樹に啼く烏の声が、澄んだ午後の空気に響いて、胸を抉るような感じを与えました。

「先生」と、咳がとまってから、夫人は幾分か嗄がれ声になって言いました。「だしぬけにこんなことを申し上げて、きっと、びっくりなさいましたでしょう。先生には、どうしてもお腹の子をたすけて頂かねばならぬので、何もかも事情を御話し致します。私が、お腹の子の無事を祈ってやまないのは、実は良人に対する復讐のためで御座います」

思いもよらぬ言葉をきいて、私は、むしろ呆気にとられました。

「御不審はもっともです」と夫人は続けました。「先生、私たちの結婚生活は、決して幸福なものではありませんでした。結婚後一年間は比較的たのしい日を送りましたが、それから以後、私たちの心は、日に日に離れて行きました。