Classici giapponesi con furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Leggi 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 60.577 caratteri · 124 schermate
「それは大変でしたよ」と妻は浮々した調子でその時のことを語った。自動車に乗せて、大学の玄関まで運ぶと、そこに看護婦が待伏せていて、板に縛りつける。無事に手術を了えると、マルは、牛乳やらビスケットやらで歓待されたのである。(もっと細かに、面白げに、妻は私に話してくれたのだが、今はもう細かな部分を忘れてしまった。今になって思うと、妻は私にそのことを面白く書かせようと考えていたのに違いない。)
手術後のマルはあの醜いものを除かれて、再び元気そうになった。だが、歳月とともに、この犬の顔は陰気くさくなって行った。自転車に乗った人を見るたびに火のついたように吠え猛った。ある日、妻がお茶の稽古から帰って、派手なコートの儘、台所の七輪を弄っていると、ふとマルが鼻を鳴らしながら近づいて来る。珍しく甘えるような仕草で、終にはのそのそと板の間に這い上って来るのであった。どうしたのだろうと私たちは不審がったが、妻はお茶の師匠の処でそこの小犬を一寸撫でてやったことを思い出した。
マルは翌年の秋、死んだ。あまり吠えつくので、誰かが鉄片を投げつけたらしく、その疵がもとで、犬はぽっくりと死んだ。