Classici giapponesi con furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Leggi 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 60.577 caratteri · 124 schermate
蛞蝓
二羽のカナリヤは無事に育って行ったが、翌年の春になると、父親と喧嘩して騒々しいので、とうとう父親だけを残して、出入の魚屋に呉れてやった。残された雄は相変らずよく囀った。春も夏も秋も、療養の妻の椅子のかたわらに、ぽつんと置かれていた。カナリヤは孤独に馴れ、ひとり囀りを娯しんでいるようにおもえた。このカナリヤが死んだのは昭和十八年の暮で、妻が医大に入院している時のことであった。数えてみると、妻がそれを買って帰った時からでも、五年間生きていたことになる。
蛞蝓
その頃、妻は夜半に起出しては蛞蝓退治をしていた。私がぼんやり夜の書斎に坐っていると、一寝入した妻は茫とした夢の温もりを背負って、しかし、いそいそとした顔つきで、懐中電灯を持って、すぐ隣の台所に現れる。それから、流場の笊の下とか、敷板の下などを点検し、蛞蝓は火箸で摘んで、塩で溶かすのであった。妻は蛞蝓の居そうな場所と、出て来る時刻を、すっかり諳じていた。これがすむと、妻は清々した顔つきで寝室に引返すのであった。
清潔好きの妻のことで、台所など自分の体のつづきのようにおもっているらしかったが、それにしても、蛞蝓は相手が相手だけに、私には何だかおかしかった。