Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Leggi 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 60.577 caratteri · 124 schermate
☆私はその男の親切な顔をどういう風に眺めたらいいのだろうかと、いつも微妙な悩みに悩まされるのだ。柔和な表情はしているが、どこか底知れないものを湛えているし、どうかした拍子に顳に浮かぶギラリとしたものが、やはり、複雑な過去を潜めており、そう単純に親切ではあり得ないことを暗示しているようでもある。どうにもならない戦災者の棄鉢で、やたらにその男にものごとを頼みに行けば、その男は万事快く肯いてくれるのではあるが、それでいてやはり私は薄暗い翳にうなされているようだった。
☆私は家を焼かれ書斎を喪い、随って外部から侵略されて来る場所を殆ど持てなくなった。むしろ、今では荷厄介なこの己の存在が、他所様の安寧を妨げるのを、そっと静かにおそれているのである。どうしても、他所の家の台所の片隅で乏しい食事を頒けてもらわねばならぬし、縮こまって箸をとっている己の姿は自分ながら情ないのである。私は知人から知人の間を乞食のような気持で訪ねて行く。昔ながらの雰囲気のいささかも失われていないもの静かな田舎の広い座敷に泊めてもらって、冬の朝そこの家の玄関をとぼとぼと立去ってゆく私の後姿には、後光が射しているのであった。