Classici giapponesi con furigana
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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
Leggi 古き小画 (ふるきミニエチュア) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.298 caratteri · 140 schermate
此方の端に自分がいる。父の熾な、雄々しい気勢を自分は夜明けに何より速く暁の光を感じる雲のように感じている。けれども、父の方は、自分がどんな感激に震え、待望に息をのんでいるか、まるで知らない。声もかけ得ず、面も合せ得ないうちに、老た太陽は、堂々と、天地を紅に染めて地の下にかくれてしまうかもしれない。雲には、明日という、大きな約束がある。けれども自分には何があるだろう? 月ならば、沈んだ日の照り返しで、あんなに耀くことも出来る。自分は、奇妙な因縁で、地に堕ちた月だ。未だ成り出でない星ともいえる。日の余光は強くあっても、自分には、大らかに空を運行して、その輝きを受くるだけの、あの宇宙を充す不思議な生き方の力の分け前を得ていないのだ。
冷やかな石の欄に頭をつけていたスーラーブは、ふと、何処かに人の跫音をききつけた。
彼は、思わずきっと頭をもたげ、耳を※(そばだ)てた。四辺のひっそりとした静けさを踏みしめるように、石階を登って来る。スーラーブの、藪かげに獣の気勢をききつけた敏い耳は、それがフェルトの長靴を穿いた足で、丹念に一段、一段と登る一方が軽く跛(びっこ)を引くのまできき分けた。